ホラー・サスペンス漫画のおすすめ6選
背筋が凍る傑作たち
「怖いのに読んでしまう」は最高の中毒
ホラー漫画の怖さは、映画と違って自分のペースで怖がるしかないところにあります。 音も動きもないのに、ページをめくる自分の指が恐怖の引き金になる。 「見たくない、でもめくりたい」という葛藤こそ、このジャンル最大の快楽です。
今回は正統派の怪異ホラーから、ゾンビもの、じわじわ心を蝕む心理サスペンスまで、 怖さのタイプが違う6作品を選びました。 夏の夜のお供に。ただし就寝前の読書は自己責任でお願いします。
眠れなくなるおすすめの6作品
光が死んだ夏(既刊)
山あいの集落で育った幼馴染の佳紀と光。しかしある日、 佳紀は気づいてしまいます──目の前にいる「光」は、光の姿をした別のナニカだと。 それでも佳紀は、親友の顔をしたそれと日常を続けることを選びます。 喪失と「代替」への愛着という歪んだ関係性を軸に、 田舎の湿度ごと恐怖を描く筆致は新世代ホラーの筆頭格。 「大切な人がある日、別のものになっていたら」という普遍の恐怖に、 青春の切なさが同居する話題作です。アニメ化もされました。
アイアムアヒーロー(全22巻)
冴えない漫画家アシスタント・鈴木英雄、35歳。 彼の垂れ流しの日常が、謎の感染症「ZQN」の蔓延で一夜にして地獄に変わります。 本作の恐怖は、ゾンビそのものより「日常が壊れていく過程」の解像度。 最初の異変の朝の描写は、パンデミックものの歴史に残る戦慄です。 極限状況で露わになる人間のみっともなさと、 それでも「ヒーロー」であろうとする主人公の姿が胸を打つ、全22巻の金字塔。
亜人(全17巻)
交通事故で死んだはずの高校生・永井圭は蘇り、 「亜人」──死なない人間であることが発覚します。 その瞬間から彼は、国家に捕獲され実験材料にされる側の存在に。 「不死身」を持つ者が最も恐ろしい目に遭うという逆転の発想と、 冷徹なまでに合理的な主人公のキャラクターが独特の緊張感を生みます。 テロリスト・佐藤との頭脳戦を軸にした後半のノンストップ感は、 サスペンスアクションとして一級品。全17巻で完結済みです。
ゴールデンゴールド(既刊)
瀬戸内の島で暮らす中学生・早坂琉花が拾った奇妙な置物。 それを祀った日から、家業の民宿が異様に繁盛し始めます。 「フクノカミ」と呼ばれるそれは、願いを叶えているのか、島を蝕んでいるのか。 派手な怪異は起きないのに、欲望で少しずつ変質していく人間と島の空気が たまらなく不気味で、ページの隅々まで「嫌な予感」が満ちています。 じっとりと肌にまとわりつく和製ホラーの傑作です。
惡の華(全11巻)
ボードレールを愛読する文学少年・春日は、出来心で 想い人の体操着を盗んでしまいます。それを目撃していたのが、 クラスの嫌われ者・仲村さん。「契約」を強いられた春日は、 彼女に引きずられるように背徳の道へ堕ちていきます。 幽霊も殺人鬼も出てこないのに、思春期の自意識そのものが恐怖として迫る 心理サスペンスの怪作。読んでいるこちらの内側を覗かれているような 居心地の悪さは唯一無二です。全11巻、後半の展開まで含めて忘れられません。
累 -かさね-(全14巻)
醜い容姿ゆえに虐げられてきた少女・累(かさね)。 伝説の女優だった母の遺品は、口づけした相手と顔を交換できる口紅でした。 他人の美貌を「奪って」舞台に立つ累の成功と破滅を描く、 歌舞伎の怪談のような様式美に満ちたダークサスペンスです。 美醜という残酷なテーマに正面から切り込み、 「顔を奪われる側」の恐怖と「奪う側」の業を同時に描く緊張感は圧巻。 土屋太鳳主演で実写映画化もされた全14巻の完結作です。
ほかにも: 背筋が凍る名作
- 僕だけがいない街(三部けい) ─ タイムリープで連続誘拐事件に挑む。犯人の「目」の怖さ。
- 刻刻(堀尾省太) ─ 止まった世界に「いる」モノたち。『ゴールデンゴールド』作者の出世作。
- テラフォーマーズ(貴家悠・橘賢一) ─ 火星で進化した「あれ」との戦争。生理的恐怖の直球。
- ファイアパンチ(藤本タツキ) ─ 燃え続ける男の復讐譚。倫理を揺さぶる問題作。
- ゴールデンカムイ(野田サトル) ─ 冒険活劇ながら、刺青人皮を巡る猟奇とスリルはサスペンス級。
- 人喰いマンションと大家のメゾン(田中空・あきま) ─ 人とモノを「再利用」するマンションの静かな怖さ。